天の蛇口を調節しよう

谷崎 樹生 (たにざき しげお)

2015年01月10日 01:08

去年の10月から書きかけでほったらかしにしてあった記事があったので、なんとかしようと思います。
実は今、北風が冷たい大阪の実家に帰省中です。炬燵の中で書いています。
(以下、去年の10月10日の時点でのお話です。赤字の部分は最近書き加えたものです。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この夏も異常気象でしたね。
梅雨明け後の一番暑い頃の暑さを9月まで引きずってきた石垣島は連日「熱中症情報」が出され、日中の日向での作業には命の危険を感じるほどの暑さでした。
この夏の石垣島は、台風が来なかったし、夏らしい南風が吹き抜けず、海にも陸にも大気にも熱気がこもってしまっていたのでしょう。
先日の台風18号と今度の19号のおかげで北寄りの風が吹いてやっと涼しくなってきた石垣島です。

一方、西日本では梅雨明け後も日照不足で雨が多く、夏らしい夏になりきれないまま秋になってしまったようです。
この夏は、全国的に局所的な豪雨が頻発して大変な被害が出ましたね。

実はそんな異常な夏を避けるように、この夏も一月ほどマレーシアに仕事で行ってきました。
向こうはほぼ赤道直下ですが、毎晩雷雨があり、冷たい雨と冷たい空気が上空から下りてきて、日中の熱気を冷ましてくれるので、早朝は朝靄がかかってどこかの高原の避暑地のように爽やかで、涼しさを通り越して寒いくらいです。
毎晩のスコールが暑さをリセットしてくれる訳です。
昼間は晴れていても水蒸気が多いから空が白っぽく、抜けるような青空はめったに見られません。
太陽に白いフィルターがかかったような日中の日射しは穏やかで、日向にいても石垣島のように日射しを痛いと感じたことはありませんでした。ボリュームタップリの大きな木陰を吹き抜ける海風は心地よく、一年中こんな気候ならマレーシアに住むのもいいなぁ・・・などと思っていたら、10月から2月までは雨期で毎日雨が降っているそうです。
(マレーシアでは近年雨期のお天気が荒れ模様で、毎年のようにとんでもない大雨が降って、洪水被害が頻発しています。先日墜落したエアアジア機も巨大な積乱雲に突入してしまったから落ちたようですね。)

石垣島からマレーシア出張の行きと帰りに立ち寄った大阪の実家も、この夏の異常気象で全然暑くありませんでした。

ところが、石垣島は連日33℃~34℃まで気温が上がり、夜になってもちっとも涼しくなってくれません。

という訳で、この夏は9月の末まで少雨傾向が続き、遠くを通った台風で空気は入れ替わったもののたいした雨が降らず、このままでは水不足になってしまいそうです。(実際11月には石垣市と竹富町で制限給水が行われました。あの西表島で水不足というのですから驚きです。)

それでも、海の上では所々で大雨が降っているようで、大きな積乱雲の底が抜けたように局所的な豪雨が見られます。
気象台が言う雨量は雨量計がある観測点での雨量だけですね。だけど実際には、観測点では全く降っていなくても、数百メートル離れた所では土砂降りというようなことがよくある訳です。
降水量を点でとらえるのではなく、面的に評価できないものでしょうか?
例えば「石垣島とその周辺海域のこの範囲で、この24時間に、何十トンの降水があった。」というようなとらえ方ができると気象現象をより詳しく理解できるようになると思う訳です。
レーダーや人工衛星を使えばかなり正確にこのような「総降水量」を評価できると思うのですが・・・・・
(気温も点ではなく面で評価できるようになると良いですね。)

10mmも降ってくれたら暑さがリセットされてしのぎやすくなるし、降らなくても雲が日射しを遮ってくれるだけずいぶん涼しくなるのですが、なかなか巧く雲に当たらないと、熱気が蓄積していくようです。

ちょっと大きめの積雲というか、雄大積雲というのか、小さめの積乱雲を巧くコントロールできたら、こんな殺人的な暑さも、強すぎる日射しも、旱魃も無い過ごしやすい夏になるんじゃないかと、毎年夏が来る度にそう思っています。

人工的に上昇気流を作って雲の生長をコントロールし、天の蛇口を調節することはさほど難しいこととは思えないのですが、なぜやらないんでしょうねぇ?

底が抜けて雨が降っている雄大積雲をよく見ていると、雲の頂の方からポッと突出したような小さなキノコ雲がよく見られます。おそらく上昇気流が雨のツボを押したのでしょう。
人工降雨というと、飛行機で雲の上からドライアイスやヨウ化銀やセメントなどを撒いたり、雲の中にロケットを打ち込んで爆発させるといった「ちからわざ」が一般的ですが、熱気泡のような小さな上昇気流を人工的に作って雲のツボを巧く押してやれば雨が降らせるのではないかと私は思っています。
実際、自然の状態での降雨はそのようにして起こっているのだと思います。

月や火星で起こっていることではなく、ほんの数キロメートル先、数百メートルの上空で起こっている気象現象なんですから、センサーをたくさん飛ばして観測密度を上げれば、
雨雲の内部とその周辺でいったい何が起こっているのか?
なぜ雨を降らせる雲と降らせない雲があるのか?
どうすれば小さな操作で大きな変化を起こさせて、雨を降らせたり止ませたりすることができるのかもわかるはずです。

必要なのは気象観測学をさらに発展させた気象操作学でしょう。
観測ばかりやっていたって詳細なデータが貯まるだけで、一歩も前に進んでいないのが残念ながら現在の気象観測の現状だと思います。
例えば、伊勢湾台風からもう50年以上も経っているのに、いまだに台風が近づく度に「海岸付近では高潮や高波の恐れがあります。」としか言えないのですから話になりませんね。そんなことは気象台に言われなくてもみんな知っていることです。
気象台なら台風の風と気圧の低下の影響で海面が何㎝盛り上がっているのかを観測して高潮の数値予報を出すべきでしょう。レーダーや人工衛星、海底に設置した水深計を使えばできないことではないでしょう。

「従来の地震学では地震予知はできない。地震予知には地震予知学が必要だ!」というのは地震学者の言葉です。
実際ギリシャでは地震学者ではなく、物理学者が電磁波の観測による地震の予知に成功しています。
国内でも物理学者や測量学者が地震予知の研究を進めています。
気象操作を成功させるのにも、気象学者だけではなく、数学者や物理学者の力が必要でしょう。

タイムマシーンや重力制御装置のような、まだ実在しないものを作ろうというのではなく、突然の集中豪雨などは実際に自然の中で起こっていることなのです。
お手本があるのですから詳しく観測すればそのメカニズムが解明されるはずです。
目の前で(と言っても数キロメートルは離れていますが・・・)起こっている気象現象の詳細を究明すれば、簡単な操作で雲を育てたり、雨を降らせたり、止ませたりすることぐらいすぐにできるようになるはずです。
こんなに面白くて役に立つ研究はそうないと思うのですが、なぜやらないんでしょうね。
気象操作が実現するとなにか困ったことが起こるんでしょうか?不都合なことでもあるのでしょうか?

今後気候変動がますます激しくなることが予想されています。(私は温暖化が進むとは思っていませんが、それは置いとて)豪雨や旱魃、異常な高温による被害を無くすためにも、気象操作は早く実現させねばならないと思っています。
冷房や暖房に莫大なエネルギーを使うより、気象操作で街全体を涼しくしたり暖かくしたりできればエネルギーの節約にもなるでしょう。
雨の降り方をコントロールできるようになれば、ダムやパイプラインなどの灌漑施設が不要になります。

日本の縮図のような八重山諸島は気象操作実験の最適地だと思います。
先ずは洋上で雲を育てたり雨を降らせることから始めれば、大きな問題は起こらないでしょう。
洋上での実験が巧くいって技術的な問題が無いなら、島の陸上に雨を降らせたり、雲を作って日射しを遮ったりすれば良い訳です。

天の蛇口を調節する技術が確立すれば、土石流も洪水も、大干魃も熱中症も防げるようになるはずです。
そうなったら、なにか不都合があるのでしょうか?(エネルギー産業や土木建築業界から抵抗があるかもしれませんが、もはやそんなことを言っている状況ではないはずです。)

「やったことがないからできない」とか「難しいからやらない」と言うのは簡単なことですが、それでは何も変わりませんからね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
★今年度から始まった「国営かんがい排水事業石垣島地区」だか、「国営土地改良事業石垣島地区」という大型公共事業は、12年間に760億円の巨費を投じて五つのダムを連結したり、農業用水のパイプラインを延長して島中に隈無く農業用水を行き渡らせるという計画だそうです。
底原ダムのダム堤にメガソーラーを設置するという計画もあるそうですね。
(底原ダムは浅くて広いダムなので、大干魃が起これば流れ込む水量より水面から蒸発する水量の方が多いといわれているようですが・・・)

★760億円も使えたら、きっと天の蛇口を調節できるようになるはずです。
巧くやれば台風もコントロールできるようになるかもしれません。

★ダムを造って水を溜めるということは、4000年以上前から行われてきた古い技術です。
いつまでもそんな前時代的な技術にしがみついていないで、そろそろ新しい水資源管理技術への扉を開いたらどうでしょう。

関連記事