2010年01月13日
リュウキュウマツ vs ガジュマル
絞め殺し植物という面白い木があります。(絞め殺される側にはちっとも面白くないかもしれませんが・・・)
八重山ではクワ科イチジク属の4種(ガジュマル・アコウ・オオバアコウ・ハマイヌビワ)が、締め殺しを行います。
森の中で地道に地面から生えると幼木は暗い林床で陽の当たらない長い下積み時代を耐えねばなりませんが、この4種のイチジク達は鳥に運ばれた種子が、木の上の樹洞の窪みなどでも発芽し気根を地面まで伸ばします。
木の上ですから光は充分に当たりますが、乾燥には耐えねばなりません。
気根が地面に届くと一気に成長し、たくさんの気根が網目状に土台になった木の幹を覆ってしまいます。
やがて重なり合った気根同士が融合して一体化し、丈夫な籠状の構造で土台になった木を閉じ込めてしまいます。
土台の木は生長しようとすると、自分で自分の首を絞めてしまうことになって、最終的には枯れてしまうわけです。
絞め殺し植物は、森の中で大木の上で育つことで、まず光を横取りし、最終的には大木が占めていた空間を丸ごと乗っ取ってしまうことになるわけです。
ところが、土台になった木の中には、やられっぱなしではなく、反撃に成功するものもあるようです。
数年前、ガジュマルがリュウキュウマツを絞め殺しているのを見つけました。
2007年11月の写真です。リュウキュウマツの赤茶色の幹をガジュマルが白っぽい気根のカゴで包み込んで羽交い締めにしています。
絞め殺し植物のことを英語でClinch Plant とか Strangler Fig と呼びますが、Clinchはボクシングのクリンチですね。Strangler Figというのは絞め殺し屋のイチジクということでしょう。
フジのように巻き付いた相手を絞め殺してしまうツル植物はたくさんありますが、気根で羽交い締めにして絞め殺すのはイチジクの仲間だけなのかもしれませんね。
観葉植物としてお馴染みのインドゴムノキもおそらく原産地では締め殺しをやっているはずです。
沖縄では露地で大木になりますが、花は咲かないようです。(咲いたとしても花粉を運んでくれる専属のイチジクコバチがいないから種子はできないでしょう。)
さて、二年前にはガジュマルがリュウキュウマツを絞め殺してほぼ勝負あったかのように見えましたが、よく見るとガジュマルの様子が変です。
樹皮の張りと艶は充分なのですが、枝の出方と葉の付き方が妙に病的です。
リュウキュウマツの方は一本の枝だけが妙に元気で、まだまだ勝負を諦めていないようにも見えました。
じつは二年前の自然観察会でこの木達を紹介したとき「今後の成り行きに注目ですね。」と言っておきましたが、やはりこのリュウキュウマツはただ者ではなかったようです。
圧倒的に優位な態勢のガジュマルが二年前すでに弱っていたのは、リュウキュウマツのアレロパシーによってダメージを受けていたからなんでしょう。
アレロパシーというのは「他感作用」などと訳されていますが、この訳では何のことだかサッパリですね。
浅く理解したい人には http://www.aspara-sl.com/arero.html
深みにはまりたい人には http://www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/inovlec2004/1-3.pdf がお勧めです。
さて、二年前の寄り添う二人の姿をもっとよく見てみましょう。
当時はまだガジュマルにも葉が付いていました。
ところが先日2010年1月4日には、
このガジュマルは完全に枯れてしまい、樹皮が剥げ落ち始めています。
今後は枯れた枝が台風で折れ、リュウキュウマツの幹が太れば抱きついていた籠状の気根も剥がれ落ちてしまうのでしょう。
リュウキュウマツの化学兵器はなかなか強力なようです。
そうそう、時々絞め殺しイチジクがヤシの木に取りついているのを見かけますが、ヤシのように幹が太らない木に取りついても絞め殺しはできません。
今回の記事は病み上がりということもあって、やや消化不良の感も否めませんが、アレロパシーやイチジクとイチジクコバチの話の底無し沼に踏み込む体力も気力もないので今はまだこの辺でお開きにしようと思います。たまにはこんな手抜きブログも楽でいいなぁと思います。(腕・肩・背中がイタタタタ・・・)
何ヶ月もほったらかしかと思ったら一晩に二回も更新することがる油断も隙もないブログです。
やればできる、やるときはやる!・・・と言うより、やるときとやらないときの差が激しすぎるという性癖があるようです。
子供の頃から「三む主義」でした。私の「三む主義」は世間様の「三無主義」とは違って、「無理・無駄・斑」の「三む主義」です。
最近では「無茶」が加わって「四む主義」になって時々体調を崩して酷い目に遭うわけです。
さて、二年越しの大ネタが二つも(実は三つかも?)あるんじゃが、のんびりやりますからあんまり期待しないでください。
八重山ではクワ科イチジク属の4種(ガジュマル・アコウ・オオバアコウ・ハマイヌビワ)が、締め殺しを行います。
森の中で地道に地面から生えると幼木は暗い林床で陽の当たらない長い下積み時代を耐えねばなりませんが、この4種のイチジク達は鳥に運ばれた種子が、木の上の樹洞の窪みなどでも発芽し気根を地面まで伸ばします。
木の上ですから光は充分に当たりますが、乾燥には耐えねばなりません。
気根が地面に届くと一気に成長し、たくさんの気根が網目状に土台になった木の幹を覆ってしまいます。
やがて重なり合った気根同士が融合して一体化し、丈夫な籠状の構造で土台になった木を閉じ込めてしまいます。
土台の木は生長しようとすると、自分で自分の首を絞めてしまうことになって、最終的には枯れてしまうわけです。
絞め殺し植物は、森の中で大木の上で育つことで、まず光を横取りし、最終的には大木が占めていた空間を丸ごと乗っ取ってしまうことになるわけです。
ところが、土台になった木の中には、やられっぱなしではなく、反撃に成功するものもあるようです。
数年前、ガジュマルがリュウキュウマツを絞め殺しているのを見つけました。
2007年11月の写真です。リュウキュウマツの赤茶色の幹をガジュマルが白っぽい気根のカゴで包み込んで羽交い締めにしています。
絞め殺し植物のことを英語でClinch Plant とか Strangler Fig と呼びますが、Clinchはボクシングのクリンチですね。Strangler Figというのは絞め殺し屋のイチジクということでしょう。
フジのように巻き付いた相手を絞め殺してしまうツル植物はたくさんありますが、気根で羽交い締めにして絞め殺すのはイチジクの仲間だけなのかもしれませんね。
観葉植物としてお馴染みのインドゴムノキもおそらく原産地では締め殺しをやっているはずです。
沖縄では露地で大木になりますが、花は咲かないようです。(咲いたとしても花粉を運んでくれる専属のイチジクコバチがいないから種子はできないでしょう。)
さて、二年前にはガジュマルがリュウキュウマツを絞め殺してほぼ勝負あったかのように見えましたが、よく見るとガジュマルの様子が変です。
樹皮の張りと艶は充分なのですが、枝の出方と葉の付き方が妙に病的です。
リュウキュウマツの方は一本の枝だけが妙に元気で、まだまだ勝負を諦めていないようにも見えました。
じつは二年前の自然観察会でこの木達を紹介したとき「今後の成り行きに注目ですね。」と言っておきましたが、やはりこのリュウキュウマツはただ者ではなかったようです。
圧倒的に優位な態勢のガジュマルが二年前すでに弱っていたのは、リュウキュウマツのアレロパシーによってダメージを受けていたからなんでしょう。
アレロパシーというのは「他感作用」などと訳されていますが、この訳では何のことだかサッパリですね。
浅く理解したい人には http://www.aspara-sl.com/arero.html
深みにはまりたい人には http://www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/inovlec2004/1-3.pdf がお勧めです。
さて、二年前の寄り添う二人の姿をもっとよく見てみましょう。
当時はまだガジュマルにも葉が付いていました。
ところが先日2010年1月4日には、
このガジュマルは完全に枯れてしまい、樹皮が剥げ落ち始めています。
今後は枯れた枝が台風で折れ、リュウキュウマツの幹が太れば抱きついていた籠状の気根も剥がれ落ちてしまうのでしょう。
リュウキュウマツの化学兵器はなかなか強力なようです。
そうそう、時々絞め殺しイチジクがヤシの木に取りついているのを見かけますが、ヤシのように幹が太らない木に取りついても絞め殺しはできません。
今回の記事は病み上がりということもあって、やや消化不良の感も否めませんが、アレロパシーやイチジクとイチジクコバチの話の底無し沼に踏み込む体力も気力もないので今はまだこの辺でお開きにしようと思います。たまにはこんな手抜きブログも楽でいいなぁと思います。(腕・肩・背中がイタタタタ・・・)
何ヶ月もほったらかしかと思ったら一晩に二回も更新することがる油断も隙もないブログです。
やればできる、やるときはやる!・・・と言うより、やるときとやらないときの差が激しすぎるという性癖があるようです。
子供の頃から「三む主義」でした。私の「三む主義」は世間様の「三無主義」とは違って、「無理・無駄・斑」の「三む主義」です。
最近では「無茶」が加わって「四む主義」になって時々体調を崩して酷い目に遭うわけです。
さて、二年越しの大ネタが二つも(実は三つかも?)あるんじゃが、のんびりやりますからあんまり期待しないでください。
Posted by 谷崎 樹生 (たにざき しげお) at 00:04│Comments(2)
│自然観察
この記事へのコメント
おぉ 二日連続の更新!!
あまりムリせずに(読者としては楽しいけどね)
絞め殺し失敗もあり,ですか。
びっくりです。
マツは常に勝つのでしょうか?
あまりムリせずに(読者としては楽しいけどね)
絞め殺し失敗もあり,ですか。
びっくりです。
マツは常に勝つのでしょうか?
Posted by sazae at 2010年01月13日 00:17
マツはアレロパシーが強いからか、着生植物が付きにくいようですね。
鳥の糞の中の種子の発芽を抑制する効果があるのかもしれませんが、それでもヤドリギや絞め殺し植物は時々マツの木に乗っかっていますね。たいしたもんです。
で、リュウキュウマツ対絞め殺し植物の勝負ですが、事例が少ないのでまだ何とも言えませんが、リュウキュウマツの化学兵器にはなかなか侮れないものがありそうです。
鳥の糞の中の種子の発芽を抑制する効果があるのかもしれませんが、それでもヤドリギや絞め殺し植物は時々マツの木に乗っかっていますね。たいしたもんです。
で、リュウキュウマツ対絞め殺し植物の勝負ですが、事例が少ないのでまだ何とも言えませんが、リュウキュウマツの化学兵器にはなかなか侮れないものがありそうです。
Posted by 谷崎 樹生 (たにざき しげお) at 2010年01月13日 09:54