てぃーだブログ › 自然日記 › 自然観察 › イファンガニ(イファ赤石)の秘密

2011年10月27日

イファンガニ(イファ赤石)の秘密

先日の記事「バランスボール」で、
(今日は久しぶりに遠出をして安良方面の浜に行ってきました。ちょっと面白い小さな発見もあったので、この件については、そのうち報告いたします。)と、書きましたが、今日はその小さな発見のお話しです。

「イファンガニ」というのは平久保半島東海岸、岩崎の南の浜にある赤褐色の大岩です。
「石で叩くと雨が降る」という伝説もあるそうですが、やはり一番気になっていたのはその色です。
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
イファンガニは過去に何度も見たことがありましたが、たいていウミガメの上陸・産卵跡を探すための真夏の炎天下の浜歩きの途中でした。
何時間も海岸を歩き続けてヘロヘロになった頃に辿り着く所にあるので、気にはなっていたのですが、とてもじっくり観察するゆとりはありませんでした。
と言うのは、イファンガニのあるところが、石垣島の中でも「地の果て」というか、「辺境」というか、とってもアクセス困難な場所だからです。
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
この空中写真は石垣島ウミガメ研究会がウミガメの産卵調査のために浜に名前を付けたものですが、
平久保半島の東海岸は放牧地と牧草地しかない無人地帯です。
イファンガニは岩崎南浜の北の端にあります。

今回、シイサシバルという浜に写真を撮りに行ったついでにイファンガニも見てきたのです。
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
岩崎南浜の北の端
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
イファンガニはここにあります。
空中写真でも判るほどの赤さび色です。
イファンガニ(イファ赤石)の秘密

さび色の大岩「イファンガニ」は昔から注目されていたようで、1771年の明和大津波では55mほど動いたという記録も残っています。
「大波之時各村之形行書」は八重山各村の津波被害状況を詳細に記録した文書ですが、その後半に付録のようにトピックスがまとめられた「奇妙変異記」によると、
「安良村より北方の伊波泊という所に、二間角程の鉄のような石がある。
ただし、この石は俗に安良大カネと呼ばれ、元々同所の浜にあったものだが、津波によって三十間余り北方に引き流された。」
と、あります。
「安良大カネ」というのは「イファンガニ」のことで、三十間余りというと54m以上ということになりますね。

今回初めてそのイファンガニをしげしげと観察することができたので、気がついたことをまとめておこうと思います。

平久保半島の地質は主にトムル層の緑色片岩から成っていますが、何本か流紋岩質の熔岩が陥入した帯が有るようです。
マグマが岩の割れ目を押し広げるように湧き上がってくる時、トムル層の緑色片岩に流紋岩質の熔岩が接触して事件は起きたようです。

全体が鉄分をたくさん含む均質な岩なのかと思っていましたが、よく見ると、どうやらイファンガニはトムル層の緑色片岩と鉄分をタップリ含んだ流紋岩がくっついた岩のようです。
にぎり寿司のように緑色片岩のシャリの上に流紋岩のネタが乗っかっています。
緑色片岩は本来暗緑色をしていますが、イファンガニではその表面が赤褐色や黄褐色の何かに覆われています。
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
特にこの黄褐色の部分は
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
上の方の赤褐色の部分(流紋岩)から溶け出した成分が緑色片岩の表面に析出・沈着したもののようです。
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
この錆び瘤のような物は二次的に水溶液から析出・沈着した物でしょう。
硫黄分でも含んでいるのかとも思いましたが、バーナーの火であぶっても変化無しでしたから、たぶん主成分は鉄の酸化物なんでしょう。(銅やマンガンや硫黄も少しは含んでいるのかもしれません)

イファンガニは緑色片岩と流紋岩がくっついたものだ、と言いましたが、
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
境目を描き込むと、
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
こんな感じだと思います。
黄色い線の左側が緑色片岩、右が流紋岩です。

その境目をよく見てみましょう。
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
冷たい緑色片岩の割れ目に流紋岩質のマグマが陥入してきて接触したところがこの境目なんでしょう。
随分濃厚な酸化鉄が沈着しているようです。
流紋岩が冷え固まってからも雨水や地下水に溶けた鉄分がさらに沈着したのでしょう。

緑色片岩の表面を覆う酸化鉄の膜が一部剥がれて緑色片岩の暗緑色の地肌が見えているところもありました。
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
イファンガニ(イファ赤石)の秘密
イファンガニ(イファ赤石)の秘密

流紋岩マグマと接触した緑色片岩は随分熱かったでしょうね。

付近には昔銅鉱石を掘った穴も残っています。
マグマが陥入したところでは、急激に冷やされたマグマの中の成分が集まって鉱脈を作るということがよくあるようです。

★以上が今回イファンガニ本人から聞いた彼の経歴です。
またいつか会いに行ってもっと詳しい話を聞いてみたいものだと思っています。



同じカテゴリー(自然観察)の記事
謎の漂着物
謎の漂着物(2012-02-07 16:28)

クロスラミナ
クロスラミナ(2011-08-29 00:00)


Posted by 谷崎 樹生 (たにざき しげお) at 23:59│Comments(0)自然観察
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。