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2011年09月12日

海岸林ツアー

9/7は、「アンパルの保全と賢明な利用を進める連絡会」(略称:アンパル連絡会)主催の「海岸林見学ツアー」の案内でした。
13:30から17:00まで、市役所のバスでアンパル連絡会のメンバーと市のスタッフ、20人ほどで石垣島の西側半分を時計回りに回って、海岸林や農地防風林の造林地とそのお手本とすべき海岸林を見て回りました。
海岸林ツアー
市役所から西へ、①②はアンパル、③④は崎枝南、⑤は通称ウガン崎マリンビーチ、⑥は県指定天然記念物ネバルウタキの海岸林、トンネルを通って、⑦は磯辺の農地防風林、というコースです。

いつもの観察会のように、資料を付けておきます。サムネイルをクリックすると大きく表示されます。
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(ちょっとサムネイルの扱いに慣れていないので、表示が大きすぎるかもしれませんが、小さすぎて読めないよりはましでしょう。)

1枚目と2枚目は観察ポイントの解説と位置図です。
造林地にはその事業年度・規模・事業費・樹種・本数のデータも付けておきました。
せっかく役所からデータをいただいたので、ちょっと計算して、
一本あたり、1mあたりの事業費を算出してみました。
⑦の磯辺地区農地防風林では、「23913円/本」という驚くべき値がでていますが、これは、他所より大きめの80㎝苗を使っているからなんでしょう。
もちろん苗木一本の値段ではなく、防風ネットや防風柵、防草シートの施工を含めた総事業費を苗木の本数で割った値です。

3枚目と4枚目は、2003年に通称ウガン崎マリンビーチで海岸林造林事業の計画が持ち上がったとき、ウミガメの産卵上陸に関して県の担当者から相談を受けたので、どうせ海岸林を作るなら、まともな物を作ってもらいたくてちょっと頑張ってまとめた意見書です。
2003年に意見書を提出しておいたら2007年の事業にずいぶん反映されて、初めての多種混植が行われました。

さて、観察ポイントを何カ所か写真で紹介しましょう。
海岸林ツアー
アンパル名蔵小橋南側の2010年度に植えられた所です。
ここには、アカテツ・テリハボク・ハスノハギリ・クロヨナ・フクギの30㎝苗が植えられ、防風ネットで囲われ、防草シートが敷き詰められています。
既にずいぶん雑草が茂っていますが、ススキやナピアグラス・ギンネムなどの背の高くなる雑草だけを計画的に駆除してやれば順調に育つでしょう。
海岸林ツアー
30㎝苗の間隔は1m、防草シートもしっかり敷き詰められていますが、周りには木立があり、風除けになっていますから防風ネットは省いてもよいところが多そうです。
その分の予算でもっと苗木の数を増やせば良かったんじゃないかと思います。

海岸林ツアー
ここは通称「ウガン崎マリンビーチ」、2007年に杉丸太の防風柵と防風ネットで守られた区画にクサトベラ・モンパノキ・アダン・テリハボク・アカテツ・クロヨナ・フクギ・コバテイシと8種類も混ぜて植えられています。しかも海側の区画には潮風に特に強いクサトベラ・モンパノキ・アダン、陸側にはその他の樹種が混植されています。
この写真は陸側からのものですが、防風ネットで囲われ、海側には杉丸太の防風柵も見えますね。
浜に出る通路も車が通れないように、風が吹き抜けないように、細く曲がりくねっています。
海岸林ツアー
海側からはこんな感じ。
海岸林ツアー
グンバイヒルガオ帯の中には漂着種子から発芽したハマゴウやハマユウ、アダンの幼木まで育ってきています。
その向こうには防風柵と防風ネットで守られた植樹帯で4年前に植えられた苗木が元気に育っています。今後は、防風ネットや防風柵をいつどのように撤去するかが問題ですね。一気に全部撤去ではなく、少しずつ様子を見ながら段階的に撤去していくのがいいでしょう。
過密に育った木の間引きもせねばならないでしょう。おそらくこのような多種混植による海岸林の再生は沖縄では初めてでしょうから今後が楽しみです。
海岸林ツアー
そんな植樹帯の陸側に背の高いテリハボクの木立が見えますが、ずいぶん風傷みしています。テリハボクは海岸林のメンバーではありますが、琉球王朝時代にフィリピンから持ち込まれた外来種で、意外と風には弱いものです。
ここにこんな樹高の高いテリハボクがあるということは、かつては充分な風除けがあったということなんでしょう。この海岸の昔の環境について、詳しいことは2003年の意見書を見て下さい。
やがて海側の植樹帯の木々が育てば、テリハボクの大木も本来の姿に戻るでしょう。

最後はネバル御嶽の海岸林の北の海岸の風景です。
海岸林ツアー
2001年には砂がたっぷりあって海浜植物帯もよく茂っていました。モクマオウの大木まで育つくらい安定した砂丘でしたが、数年後の台風で浜の砂がゴッソリ無くなりモクマオウの根元では1mほども砂が減ってしまったようです。
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今では根上がりモクマオウの立ち枯れ株が残っているだけです。

海水温が高めで海水が膨張しているからでしょうか、黒潮の暖水渦の影響なのでしょうか、近年石垣島付近の海水面は高めになっています。台風や季節風で一夜にして海岸の地形が一変してしまうこともよくあります。
海岸に人工構築物が全く無いところでもこのような海岸侵食が起こりうるわけですから、消波ブロックの投入や離岸堤の設置といったちからわざでなんとかしようなどと思ってはいけませんね。
一夜にしてゴッソリ持って行かれてしまった浜の砂が、一夜にして元に戻ってしまうことだってあるんですからね。

さて今回の海岸林ツアーは「アンパルの海岸林を今後どのように保全していくべきか」ということを考えるための見学会でした。
バスの中でも島の地史や地形・地質・土壌・植生などいろんなお話をしましたが、ツアーに参加してくれた方々が私の話をどのように受け止めて活かして下さるか、大いに期待しているところです。






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Posted by 谷崎 樹生 (たにざき しげお) at 22:08│Comments(0)自然観察会
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