2010年09月28日
白保メール102号 「水と空気と植物」
2月に白保メール101号「何色の未来?」を書いてから7ヶ月、102号も私が書いてしまいました。
99号以来このところ四回続けて私が書いたことになりますが、私が筆まめになった訳ではなく、他の二人が書かなくなっただけです。「書きたい時に、書ける人が、書けることだけ書く」という方針でやってますし、
今回もいつものように、遠くの方ばかり見ている私が書いた物ですから、気楽な読み物のつもりで読んで下さい。(それにしては少々長過ぎかも知れませんが・・・)
この夏我が家では夏を涼しく過ごすために、ベランダにドライミスト、屋上にも散水装置を設置しました。(こっちの方はまた改めて紹介しますが、水と植物を使って環境を整えるという基本方針に沿ったものです。)
ドライミストの噴霧装置というと、以前は加圧用のポンプが必要で、とても高価な物でしたが、最近水道の水圧だけで結構細かい霧を噴霧できるノズルができたようで、ずいぶん安くなりました。
たぶん来年にはもっと安くなるんでしょう。
我が家で導入したのはこんな物です。
http://eco.shop-pro.jp/?pid=14890863
他に、こんなのもありますね。
http://www.engei.net/Browse.asp?ID=61146
来年の夏も暑くなるようですから、興味のある方は、試してみるといいでしょう。
気化熱の原理で空気を冷やすドライミストはお手軽ですが、問題があるとすればケイ酸カルシウムなどが析出してガラスが曇ってしまうことでしょう。
透明な窓ガラスや車のフロントガラスの表面に付いた微小な水滴が蒸発すると、ケイ酸カルシウムやカルキなど水道水に溶けていた物が析出してガラスが曇ります。
ケイ酸カルシウムは酸では溶けませんから、コンパウンド(研磨剤)で削り落とさないかぎりこのガラスの曇りは取れません。
さて、ドライミストのことはそのうち詳しく紹介しますが、今日のお話は白保メール102号「水と空気と植物」です。水や空気や植物といったどこにでも有る物を巧く使えば明るい展望が開けるかも?というお話です。
うちのご近所の雲です。この程度の雲なら規模が小さいし雲底が高すぎるので育てても雨は期待できないかも知れませんが、日除けにはなるでしょうね。
今回は「雲を育てる」という、雲をつかむようなお話です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「水と空気と植物」
子供の頃「夏の暑さを冬まで取っておいて暖房に使ったり、冬の寒さを夏まで取っておいて冷房に使えばいいのになぁ」とよく思ったものでした。(冬に大雪が積もる地方では雪を利用した冷房システムは実用化されているようですが、石垣島では何か他の蓄熱媒体が必要ですね。)
8月のうだるように暑い日には「こんな日でも数千メートル上空には涼しい空気があるんだからそれをちょっとだけ分けてもらってくることはできないだろうか?」と考えたこともありました。(上空の冷たい空気を下界に持ってくると気圧が高くなるので圧縮されて気温が上がってしまいますから、これは理論的に無理ですが、冷たい雨にして降られせば上空の涼しさを下界に運ぶことはできそうですね。)
「雲は天才である」と言ったのは石川啄木でしたが、私も子供の頃から雲を見るのが大好きでした。
石垣島は空が広いので、雲の発生から生長・消滅まで、雲の一生を見ることができます。海の上を吹き渡ってきた湿った南風が島に上陸すると雲の赤ちゃんがムクムクと生長し始め、風が於茂登岳を駆け上がる頃には立派な大人の雲になって雨を降らせることもあります。私のような「雲好き」にはうれしい島暮らしです。
気象衛星の画像を見ていると、島も何にも無い海の上で突然積乱雲が湧き上がって生長し続け、風下側に広がる「くさび形積乱雲」というものが、しばしば発生していることが解ります。
「くさび形積乱雲」(「ニンジン型積乱雲」ともいうらしい)の下は、たいてい集中豪雨になっています。
海の上で無駄に(かどうかは解りませんが)降っている大雨のほんの一部でも島の上空で降らせることができれば、つまり『天の蛇口を調節する』ことができれば、川をせき止めて水を溜めるためにダムを作るような前時代的努力は不要になります。
旱魃対策にダムを造ってスプリンクラーで水を撒くよりは、雨をたくさん降らせる工夫をした方が良いのではないかと思うわけです。
石垣島では、年間降水量は2400mmもあるのに、雨の降り方が時間的・空間的に偏っていることが問題なのです。
島の上空で降る雨の降り方を人為的にコントロールすることができれば島の気候はもっと穏やかなものになるでしょうし、雲を発生させて強すぎる日射しを和らげるだけでも暑い夏を過ごしやすくできるでしょう。
石垣島と西表島は隣同士の島ですが、地形と植生が全く違うからでしょうか、ずいぶん気候が違います。石垣島では、梅雨が明けたら台風が来るまでまとまった雨は期待できませんが、隣の西表島では森が多いからなんでしょうか、島の上空に雲がかかっていることが多く、どこかで雨が降っていることもあります。西表島の上空では森から蒸発した水蒸気が雲になって雨を降らせ再び地上に戻ってくるという「水循環システム」が維持されているのでしょう。
一方石垣島では、平地の森が少なくなってしまったからか、乾燥化が進んで水循環がうまくいかなくなっているようです。
「昔の石垣島はこんなに暑くなかった。日射しもこんなに強くなかった。」と島のご年配の方からよく聞きますが、おそらく昔の石垣島は今より「西表的」だったのでしょう。
そこで、以前「白保メール」にも書きましたが、私はフクギの農地防風林で島中の農地を囲ってしまって、島の風景を変え、気候まで変えてしまおうと思っているのです。植物はドライミストの発生装置のような物ですから、森を増やせば気温が下がるはずです。「石垣島の西表化計画」とでも言っておきましょうか、だけど、これには20年以上の時間がかかります。
人工的に上昇気流を発生させて、積乱雲を発生させることができれば『天の蛇口』を自由に調節することができることになるでしょう。
中国やロシアでは、雲の中にロケットを打ち込んだり、セメントやヨウ化銀を撒いたりして雨を降らせていますが、もっと簡単に雲を作って雨を降らせることはできないものかといろいろ調べてみたところ、こんな面白い論文が見つかりました。
「人工降雨促進のための上昇気流生成のシミュレーション」
http://www.kagiken.co.jp/product/gakkai/prof_matsuda.pdf#search='人工上昇気流'
計算工学というか、理論気象学とでも呼ぶべきか、コンピューターを駆使していろんな場合を想定して、計算だけで上昇気流の強さを求めた論文ですが、その中に注目すべきデータがあります。
「地上に直径50mの熱吸収体を設置して、周りの地表温が50℃の時、熱吸収体の表面温度が70℃あれば、積乱雲を発達させるに充分な上昇気流を発生させることができる」ということになるそうです。
これはかなり魅力的なデータではあります。
少しだけ、論文の中からいいとこだけを紹介しましょう。
「本報では、人工降雨を促進する可能性のある条件を『1000m以上の高度領域に鉛直方向速度0.1m/s 以上を持つこと』とすることとした。これは一般に積乱雲が形成されるのが上空1000m以上であること、雨を生成する直前の粒子の半径が100μmでありこの粒子を上空に保持するために鉛直方向速度が平均0.1m/s 必要であることによる。図8~10 に、周辺地域との温度差を設けて熱吸収体直径サイズを50m~200m まで変化させたときの、各鉛直方向速度に対する到達高度を示した。これらのシミュレーション結果より、無風ならば熱吸収体サイズ50m のとき温度差は最低20K、熱吸収体サイズ200m ならば温度差は最低15K あれば、目的とする上昇気流が得られる可能性のあることが示唆される。」
『無風ならば』というのが気になりますが、風があるときには熱吸収体の並べ方を工夫すればいいのかもしれませんね。このへんの計算もやってもらいたいものです。
梅雨明け後の旱魃期には南東の風がよく吹きますから、島の南側と東側の海岸近くにいくつか直径50mの太陽熱吸収体を置いておけばそれだけで雨を降らせることができるかもしれない、という訳です。
風向きによっては風上側の洋上に太陽熱吸収体を載せた台船を浮かべればいいということなんでしょう。
こんなことが本当にできるのか、にわかには信じがたい話ではありますが、炎天下で夏の空での雲の振る舞いを見ていたら「この島で大規模な実証試験をやってみたら面白いデータが取れるかもしれないなぁ」と思ってしまえるのです。
ただ、「出来る事と、していい事とは、違うのだ!」と、常々言っている私には、果たしてこのような気候操作が許される事なのか、という葛藤もあります。
「森を増やして島の保水力を高めて気候を昔の状態に戻す」のが許されるなら「海の上で降っている雨の一部に島の上空で降っていただく」程度の小さな気候操作も許されるのではないかとは思うのですが、この辺の判断は専門の気象学者に任せようと思います。
ただ、気象学の究極の目標は何なのか、精密な観測データを蓄積して正確な天気予報をする事で気象学が完結してしまって良いとはとても思えないのです。
もう一歩踏み込んで、気候操作という領域に手を出しても良いのではないかと思う訳です。
異常気象だとか、エネルギー問題だとか、食糧危機だとかで、地球の近未来は、かなり黒に近い灰色のようにしか思えませんが、原子力や核融合、太陽光や風力発電といったハイテクの実用化をあてにせず、水や空気や植物など、どこにでも有る物を巧く利用すれば、灰色の島の未来を少しでも明るいものに変えられるのではないかと思うのです。
石油の次は水が最も重要な経済戦略物資になるはずです。
『天の蛇口』を調節して、水資源を確保するといった小規模な気候操作技術を確立・普及することで、「オイルメジャー」に替わって「水メジャー」が世界経済を牛耳ることを阻止できると思います。
近い将来何台かの可動式の人工上昇気流発生装置を島内や周辺の海域に配置して、風上側で上昇気流を発生させて風下側で雨を降らせることができるようになるかもしれませんね。(パトリオットを配備するよりは安上がりでしょう。)
そうならなければ気象学や地球物理学の存在意義が無いのではないか、とも思っています。
★ところで、この原稿を書いてから問題の論文「人工降雨促進のための上昇気流生成のシミュレーション」について、専門家に意見を伺ったところ、やはり一番大きな問題は『無風ならば』というところでした。
雲が無いところに人工的に雲を作ることはおそらく不可能だろうが、雲の生長を促したり、雨の量を増やすことはできるかもしれないという感触でした。
人工上昇気流で、人工増雲・人工増雨なら可能性はありそうです。
★こんなニュースもあります。
http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/100903/20100903034.html
すごい物を作って世の中をひっくり返そうと頑張っている大阪の町工場ですね。
大型送風機やジェットエンジン・ロケットエンジンを太陽熱吸収体と併用すればさらに効率よく人工上昇気流を作り出せそうですね。
★新しい時代を開く技術的な突破口を見つけるためには、気象学の常識にとらわれない素人の、とんでもない発想が必要なのかもしれませんね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
★やはり、ちょっと長すぎましたね。
この原稿を仕上げてからこんなニュースが飛び込んできました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100920-00000011-mai-soci
台風の進路上に舷側に長さ20メートル、直径70センチのポンプ付き送水管を8本取り付けたポンプを装着した潜水艦を20隻配置して、深い所(と言っても水深30m)の冷たい海水を汲み上げ、海水面の水温を下げて台風の勢力を弱めようという、これもまたとんでもないアイデアです。が、潜水艦だと浮力調節が難しいし、第一とてもコスト高になってしまいそうです。
潜水艦より浮き魚礁のような物を使った方が良さそうですね。
太陽光か波力で発電した電力を蓄電池に蓄えておいて、台風が発生したらその進路に当たる所のブイだけポンプを動かして海面水温を下げるといいでしょう。
普段は浮き魚礁として機能するでしょうし、灯台にもなるし、ついでにいろんなセンサーも付けておけば海洋気象観測やクジラやウミガメの回遊調査にも使えそうだし、潜水艦の動きを監視するのにも使えそうですね。(こうなると軍事施設になってしまいますが・・・)
ただ、ここまで大きな気候操作になると、果たしてそんなことが許されるのか、出来るかも知れないがしてもいいことなのかという議論が必要でしょうね。(たぶん結論は出ないでしょうが・・・)
99号以来このところ四回続けて私が書いたことになりますが、私が筆まめになった訳ではなく、他の二人が書かなくなっただけです。「書きたい時に、書ける人が、書けることだけ書く」という方針でやってますし、
今回もいつものように、遠くの方ばかり見ている私が書いた物ですから、気楽な読み物のつもりで読んで下さい。(それにしては少々長過ぎかも知れませんが・・・)
この夏我が家では夏を涼しく過ごすために、ベランダにドライミスト、屋上にも散水装置を設置しました。(こっちの方はまた改めて紹介しますが、水と植物を使って環境を整えるという基本方針に沿ったものです。)
ドライミストの噴霧装置というと、以前は加圧用のポンプが必要で、とても高価な物でしたが、最近水道の水圧だけで結構細かい霧を噴霧できるノズルができたようで、ずいぶん安くなりました。
たぶん来年にはもっと安くなるんでしょう。
我が家で導入したのはこんな物です。
http://eco.shop-pro.jp/?pid=14890863
他に、こんなのもありますね。
http://www.engei.net/Browse.asp?ID=61146
来年の夏も暑くなるようですから、興味のある方は、試してみるといいでしょう。
気化熱の原理で空気を冷やすドライミストはお手軽ですが、問題があるとすればケイ酸カルシウムなどが析出してガラスが曇ってしまうことでしょう。
透明な窓ガラスや車のフロントガラスの表面に付いた微小な水滴が蒸発すると、ケイ酸カルシウムやカルキなど水道水に溶けていた物が析出してガラスが曇ります。
ケイ酸カルシウムは酸では溶けませんから、コンパウンド(研磨剤)で削り落とさないかぎりこのガラスの曇りは取れません。
さて、ドライミストのことはそのうち詳しく紹介しますが、今日のお話は白保メール102号「水と空気と植物」です。水や空気や植物といったどこにでも有る物を巧く使えば明るい展望が開けるかも?というお話です。
うちのご近所の雲です。この程度の雲なら規模が小さいし雲底が高すぎるので育てても雨は期待できないかも知れませんが、日除けにはなるでしょうね。
今回は「雲を育てる」という、雲をつかむようなお話です。
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「水と空気と植物」
子供の頃「夏の暑さを冬まで取っておいて暖房に使ったり、冬の寒さを夏まで取っておいて冷房に使えばいいのになぁ」とよく思ったものでした。(冬に大雪が積もる地方では雪を利用した冷房システムは実用化されているようですが、石垣島では何か他の蓄熱媒体が必要ですね。)
8月のうだるように暑い日には「こんな日でも数千メートル上空には涼しい空気があるんだからそれをちょっとだけ分けてもらってくることはできないだろうか?」と考えたこともありました。(上空の冷たい空気を下界に持ってくると気圧が高くなるので圧縮されて気温が上がってしまいますから、これは理論的に無理ですが、冷たい雨にして降られせば上空の涼しさを下界に運ぶことはできそうですね。)
「雲は天才である」と言ったのは石川啄木でしたが、私も子供の頃から雲を見るのが大好きでした。
石垣島は空が広いので、雲の発生から生長・消滅まで、雲の一生を見ることができます。海の上を吹き渡ってきた湿った南風が島に上陸すると雲の赤ちゃんがムクムクと生長し始め、風が於茂登岳を駆け上がる頃には立派な大人の雲になって雨を降らせることもあります。私のような「雲好き」にはうれしい島暮らしです。
気象衛星の画像を見ていると、島も何にも無い海の上で突然積乱雲が湧き上がって生長し続け、風下側に広がる「くさび形積乱雲」というものが、しばしば発生していることが解ります。
「くさび形積乱雲」(「ニンジン型積乱雲」ともいうらしい)の下は、たいてい集中豪雨になっています。
海の上で無駄に(かどうかは解りませんが)降っている大雨のほんの一部でも島の上空で降らせることができれば、つまり『天の蛇口を調節する』ことができれば、川をせき止めて水を溜めるためにダムを作るような前時代的努力は不要になります。
旱魃対策にダムを造ってスプリンクラーで水を撒くよりは、雨をたくさん降らせる工夫をした方が良いのではないかと思うわけです。
石垣島では、年間降水量は2400mmもあるのに、雨の降り方が時間的・空間的に偏っていることが問題なのです。
島の上空で降る雨の降り方を人為的にコントロールすることができれば島の気候はもっと穏やかなものになるでしょうし、雲を発生させて強すぎる日射しを和らげるだけでも暑い夏を過ごしやすくできるでしょう。
石垣島と西表島は隣同士の島ですが、地形と植生が全く違うからでしょうか、ずいぶん気候が違います。石垣島では、梅雨が明けたら台風が来るまでまとまった雨は期待できませんが、隣の西表島では森が多いからなんでしょうか、島の上空に雲がかかっていることが多く、どこかで雨が降っていることもあります。西表島の上空では森から蒸発した水蒸気が雲になって雨を降らせ再び地上に戻ってくるという「水循環システム」が維持されているのでしょう。
一方石垣島では、平地の森が少なくなってしまったからか、乾燥化が進んで水循環がうまくいかなくなっているようです。
「昔の石垣島はこんなに暑くなかった。日射しもこんなに強くなかった。」と島のご年配の方からよく聞きますが、おそらく昔の石垣島は今より「西表的」だったのでしょう。
そこで、以前「白保メール」にも書きましたが、私はフクギの農地防風林で島中の農地を囲ってしまって、島の風景を変え、気候まで変えてしまおうと思っているのです。植物はドライミストの発生装置のような物ですから、森を増やせば気温が下がるはずです。「石垣島の西表化計画」とでも言っておきましょうか、だけど、これには20年以上の時間がかかります。
人工的に上昇気流を発生させて、積乱雲を発生させることができれば『天の蛇口』を自由に調節することができることになるでしょう。
中国やロシアでは、雲の中にロケットを打ち込んだり、セメントやヨウ化銀を撒いたりして雨を降らせていますが、もっと簡単に雲を作って雨を降らせることはできないものかといろいろ調べてみたところ、こんな面白い論文が見つかりました。
「人工降雨促進のための上昇気流生成のシミュレーション」
http://www.kagiken.co.jp/product/gakkai/prof_matsuda.pdf#search='人工上昇気流'
計算工学というか、理論気象学とでも呼ぶべきか、コンピューターを駆使していろんな場合を想定して、計算だけで上昇気流の強さを求めた論文ですが、その中に注目すべきデータがあります。
「地上に直径50mの熱吸収体を設置して、周りの地表温が50℃の時、熱吸収体の表面温度が70℃あれば、積乱雲を発達させるに充分な上昇気流を発生させることができる」ということになるそうです。
これはかなり魅力的なデータではあります。
少しだけ、論文の中からいいとこだけを紹介しましょう。
「本報では、人工降雨を促進する可能性のある条件を『1000m以上の高度領域に鉛直方向速度0.1m/s 以上を持つこと』とすることとした。これは一般に積乱雲が形成されるのが上空1000m以上であること、雨を生成する直前の粒子の半径が100μmでありこの粒子を上空に保持するために鉛直方向速度が平均0.1m/s 必要であることによる。図8~10 に、周辺地域との温度差を設けて熱吸収体直径サイズを50m~200m まで変化させたときの、各鉛直方向速度に対する到達高度を示した。これらのシミュレーション結果より、無風ならば熱吸収体サイズ50m のとき温度差は最低20K、熱吸収体サイズ200m ならば温度差は最低15K あれば、目的とする上昇気流が得られる可能性のあることが示唆される。」
『無風ならば』というのが気になりますが、風があるときには熱吸収体の並べ方を工夫すればいいのかもしれませんね。このへんの計算もやってもらいたいものです。
梅雨明け後の旱魃期には南東の風がよく吹きますから、島の南側と東側の海岸近くにいくつか直径50mの太陽熱吸収体を置いておけばそれだけで雨を降らせることができるかもしれない、という訳です。
風向きによっては風上側の洋上に太陽熱吸収体を載せた台船を浮かべればいいということなんでしょう。
こんなことが本当にできるのか、にわかには信じがたい話ではありますが、炎天下で夏の空での雲の振る舞いを見ていたら「この島で大規模な実証試験をやってみたら面白いデータが取れるかもしれないなぁ」と思ってしまえるのです。
ただ、「出来る事と、していい事とは、違うのだ!」と、常々言っている私には、果たしてこのような気候操作が許される事なのか、という葛藤もあります。
「森を増やして島の保水力を高めて気候を昔の状態に戻す」のが許されるなら「海の上で降っている雨の一部に島の上空で降っていただく」程度の小さな気候操作も許されるのではないかとは思うのですが、この辺の判断は専門の気象学者に任せようと思います。
ただ、気象学の究極の目標は何なのか、精密な観測データを蓄積して正確な天気予報をする事で気象学が完結してしまって良いとはとても思えないのです。
もう一歩踏み込んで、気候操作という領域に手を出しても良いのではないかと思う訳です。
異常気象だとか、エネルギー問題だとか、食糧危機だとかで、地球の近未来は、かなり黒に近い灰色のようにしか思えませんが、原子力や核融合、太陽光や風力発電といったハイテクの実用化をあてにせず、水や空気や植物など、どこにでも有る物を巧く利用すれば、灰色の島の未来を少しでも明るいものに変えられるのではないかと思うのです。
石油の次は水が最も重要な経済戦略物資になるはずです。
『天の蛇口』を調節して、水資源を確保するといった小規模な気候操作技術を確立・普及することで、「オイルメジャー」に替わって「水メジャー」が世界経済を牛耳ることを阻止できると思います。
近い将来何台かの可動式の人工上昇気流発生装置を島内や周辺の海域に配置して、風上側で上昇気流を発生させて風下側で雨を降らせることができるようになるかもしれませんね。(パトリオットを配備するよりは安上がりでしょう。)
そうならなければ気象学や地球物理学の存在意義が無いのではないか、とも思っています。
★ところで、この原稿を書いてから問題の論文「人工降雨促進のための上昇気流生成のシミュレーション」について、専門家に意見を伺ったところ、やはり一番大きな問題は『無風ならば』というところでした。
雲が無いところに人工的に雲を作ることはおそらく不可能だろうが、雲の生長を促したり、雨の量を増やすことはできるかもしれないという感触でした。
人工上昇気流で、人工増雲・人工増雨なら可能性はありそうです。
★こんなニュースもあります。
http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/100903/20100903034.html
すごい物を作って世の中をひっくり返そうと頑張っている大阪の町工場ですね。
大型送風機やジェットエンジン・ロケットエンジンを太陽熱吸収体と併用すればさらに効率よく人工上昇気流を作り出せそうですね。
★新しい時代を開く技術的な突破口を見つけるためには、気象学の常識にとらわれない素人の、とんでもない発想が必要なのかもしれませんね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
★やはり、ちょっと長すぎましたね。
この原稿を仕上げてからこんなニュースが飛び込んできました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100920-00000011-mai-soci
台風の進路上に舷側に長さ20メートル、直径70センチのポンプ付き送水管を8本取り付けたポンプを装着した潜水艦を20隻配置して、深い所(と言っても水深30m)の冷たい海水を汲み上げ、海水面の水温を下げて台風の勢力を弱めようという、これもまたとんでもないアイデアです。が、潜水艦だと浮力調節が難しいし、第一とてもコスト高になってしまいそうです。
潜水艦より浮き魚礁のような物を使った方が良さそうですね。
太陽光か波力で発電した電力を蓄電池に蓄えておいて、台風が発生したらその進路に当たる所のブイだけポンプを動かして海面水温を下げるといいでしょう。
普段は浮き魚礁として機能するでしょうし、灯台にもなるし、ついでにいろんなセンサーも付けておけば海洋気象観測やクジラやウミガメの回遊調査にも使えそうだし、潜水艦の動きを監視するのにも使えそうですね。(こうなると軍事施設になってしまいますが・・・)
ただ、ここまで大きな気候操作になると、果たしてそんなことが許されるのか、出来るかも知れないがしてもいいことなのかという議論が必要でしょうね。(たぶん結論は出ないでしょうが・・・)
Posted by 谷崎 樹生 (たにざき しげお) at 13:29│Comments(2)
│原稿いろいろ
この記事へのコメント
おはようございます!
お元気そうで何より。沈黙が続いたので???
心配していました。
今回も示唆にとんだお話で考えさせられました。
谷﨑さんの発想は本当に広大で
私の視野を越えてます。
そうそう
先日,海洋博公園に行きました。
美ら海水族館の近くにドライミストの噴水
地面から吹き出す装置があり
その周りは確かに涼しかったですよ。
安価でできるのなら
ウチにも欲しいものです。
お元気そうで何より。沈黙が続いたので???
心配していました。
今回も示唆にとんだお話で考えさせられました。
谷﨑さんの発想は本当に広大で
私の視野を越えてます。
そうそう
先日,海洋博公園に行きました。
美ら海水族館の近くにドライミストの噴水
地面から吹き出す装置があり
その周りは確かに涼しかったですよ。
安価でできるのなら
ウチにも欲しいものです。
Posted by sazae at 2010年10月02日 10:26
sazaeさん、コメントしにくい「難し話」に早速気の利いたコメントをありがとう。海洋博記念公園のドライミストは私も見ました。ずいぶん大きな仕掛けでしたね。確か写真を撮ってあるはずだから、次回はドライミスト特集にしますね。石垣島はまた夏の日射しが戻ってきましたが、このネタは、寒くならないうちに投稿しないといけないですね。そうそう、最近私はオオヒキガエル捕りに励んでいます。環境省のオオヒキガエル捕獲大作戦が今年も始まったのです。昨日は尻尾のような突起があるオオヒキガエルを捕まえました。(これも写真を撮ってあるから近々軽い記事にして投稿しましょう。)
http://oohikigaeru3.blog.so-net.ne.jp/
http://oohikigaeru3.blog.so-net.ne.jp/
Posted by 谷崎 樹生 (たにざき しげお) at 2010年10月03日 01:09